SDGsとYMCA運動~2030年の世界

SDGsとYMCA運動~2030年の世界
2019.5.24講演 田中治彦氏
田中治彦

熊本YMCAとSDGsとの歴史には、3つの時代があります。最初は日本で開発教育が始まった1980年代。熊本をはじめ全国各地のYMCAも当初から国際協力募金とともに、開発教育に積極的に取り組みました。2番目は2000年代。公立学校で「総合的な学習の時間」が始まり、国際理解・環境教育が取り入れられます。国連ESD(持続可能な開発のための教育)の10年も始まります。熊本YMCAでは「ESDとまちづくりのワークショップ」を行い、日本YMCA同盟ではグローバル市民を育てる「地球市民プロジェクト」が行われました。そして、2016年からのSDGs(持続可能な開発目標)の時代となり、熊本YMCAでも取組みを開始しています。

そもそもSDGsとは何でしょうか? 国連では2001~2015年に「国連ミレニアム開発目標」(MDGs)を設定しました。発展途上国への支援を主に8つの目標を掲げ、極度の貧困解消など多くの成果が上げられました。一方でCO2増加など残された課題もあります。2016年に策定されたSDGsでは、残された課題に加え、発展途上国・先進国ともに取り組むべき課題について17の目標を設定。数値的な改善だけなく「誰一人取り残さない」という強いメッセージを含んでいます。
といっても17個全部覚える必要はなく、知っておくべきは3つの原則です。1つは「共生・包摂(inclusion)」。差別を許さず、不利益を得ている人々と共生する考え方です。2つ目は「公平・公正(equity)」です。先進国と発展途上国に「平等」な目標を設けると、貧しい国ほど負担が増えがちです。そのため、状況に合わせて負ってもらう「共通だが差異のある責任」を設定。問題を次世代に棚上げしない「世代間の公正」、国同士の格差を排除する「世代内の公正」を目指します。そして3つ目は「循環(circulation)」。自然の循環の切断=環境問題を解決するための考え方です。

SDGsの考え方は日本の教育にも取り入れられはじめ、2020年度からの学習指導要領の前文にも教育目的として明記されました。しかし、YMCAはすでに1980年代からこれらの課題に取り組んでいます。SDGsのゴールとなる2030年に向けて、なすべきことは何か。それは、惰性で活動を続けるのではなく、先ほどの3原則から17目標の真髄を読み解き、視点を改めて「自分-地域-国・世界」をつなげる視点を持ち、2030年の世界を想像して今すべきことを考えることです。


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