タイ・パヤオセンター長期ボランティア報告[Vol.1]

 タイ・バンコクのYMCAが運営している児童保護シェルター「パヤオセンター」に横浜YMCAを通して派遣され、1年間のボランティア活動を行っているYMCA国際ユースボランティア、髙山未来さんから現状報告が届きました。
YMCA NEWS 2016年8月号参照(PDF)

タイの様子
横浜YMCAのスタディーツアーにて、タイの民族衣装を着て子どもたちと共に

 パヤオセンターでの仕事をより円滑に進めるため、私は10月半ばからバンコクに語学研修に来ています。バンコクに到着したその日にプミポン国王が亡くなって外を歩く人はみんな黒い服を来ています。

 パヤオに来て半月は前任の方との引き継ぎがありました。
ボランティアとして、パヤオセンターでの私の仕事は主に3つあります。

 まず、日本からのワークキャンプやスタディツアーの受け入れです。年に7~8グループがセンターに来てくれて人身売買について勉強したり子どもたちと交流したりします。スタッフはみんな日本語が話せないので日本人の来客があるときはボランティアが対応します。

タイの様子
センターではキノコ栽培も実施。
子どもたちとキノコ小屋で作業

 次に「パヤオクラフト」の生産受注管理です。パヤオクラフトとは山岳少数民族の伝統的な刺繍をこらしたハンディクラフトのことで、毎年日本人の方にたくさん購入していただいています。子どもたちはお小遣いのために刺繍のお手伝いをしていますが、その腕前には驚きます。

 最後に、子どもたちへの日本語指導です。実際にスタートするのはパヤオセンターに戻ってからになりますが、前任のボランティアは子どもたちに自己紹介や動物や野菜の名前、日本語の歌などを教えていて、私が初めて会った時は子どもたちが日本語を知っていることにびっくりしました。「世界に一つだけの花」や「ドラえもんの歌」も歌えます。

 今はまだ、これらを全てこなすまでできていませんが、スタッフや子どもたちに助けてもらいながら過ごしてきました。タイ語が全くわからない状態でどうにかこの環境に慣れ、コミュニケーションをとることで必死でした。初めは一人でいるのも怖いけど、何か話しかけられるのも怖かったです。だからといって殻に閉じこもってはタイの皆さんも戸惑うと思うので、内容がわからなくても写真係として一緒に行動したり、同じ場所にいることを心がけました。そうすることで、場の雰囲気からある程度、話の内容が理解できたり、「この人はこんな性格でこういうふうな接し方をするんだ」ということがわかってきました。あとは“慣れ”です。

タイの様子
パヤオセンターの子どもたち

 子どもたちは、遠慮なく話しかけてくれるので、会話ができて楽しいです。でも「もっとこんなこと話せたらな」と思うことは多々あります。また、最近は、日本語の文章を書きたいと思うようになりました。ワードやメールは使うのですが、日本語を手書きする機会がなく、誰かと文通がしたい、そんな気分です。

 今後の目標は、子どもたちに私が持っているものをできるだけたくさん教えてあげることです。日本語はもちろん、ダンスやピアノを一緒にしたり、子どもたちは九州のことをほとんど知らないので私の地元のことも知ってもらいたいです。センターにいるのは本当にごく普通の小中高生ですが、親元を離れていたり、両親がいなかったり、家にいた頃十分な教育を受けることができなかったり、国籍がなかったり、複雑な事情があることは事実です。その分、このセンターにいる間に他では得られないような経験をたくさんしてほしいし、長期ボランティアだからこそ私にはそのお手伝いができると思います。

 パヤオセンターの子どもたちは10月初めから長期休みでほとんど帰省しています。1カ月後、久しぶりに子どもたちと再会できるのがとても楽しみです。少しでもタイ語を上達させてびっくりさせられるように頑張って勉強します。

パヤオセンターについて

 パヤオセンターは、女性や子どもを人身売買の被害から救う目的で、今から23年前に建てられました。今年度は小3~高1の女の子24人と男の子9人が共同生活をしています。タイ北部で生活する山岳少数民族のアカ族、モン族の子どももたくさんいますが、普段はみんなタイ語を話しています。現在、センターにいる子どもたちの中にも人身売買の被害に遭うリスクが高かったり、小さい頃教育を受けることができなかったり、両親がいなかったり様々な事情を抱えた子どもが多くいます。しかし、センターの中ではみんな兄弟のように仲が良く、スタッフのお手伝いもしっかりして、楽しく暮らしています。センターでは、子どもたちに食事や教育、医療などを提供しています。こうした人身売買についての取組みの他にも、日本に出稼ぎに行って性的搾取の被害に遭った女性(リターニー)の方の支援や、有機農業を推進する取組みなども行っています。そして、日本の長期休みの期間になると多くの学生がワークキャンプやスタディツアーに来てくれるので、その受け入れも行っています。
 パヤオセンターはバンコクYMCAのブランチです。横浜YMCAは設立当初からセンターの支援をしていて現在でも私のようなボランティアを毎年派遣したりハンディクラフトを購入してくれたりしています。


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